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「アスリートの尊厳を守るためのシンポジウム」に参加して

メルマガの第14号が発刊されました!

河島徳基のスポーツ業界の歩き方
【価格】525円/月(1配信あたり約262円)
【発行周期】毎月 第2火曜日・第4火曜日(年末年始を除く)

http://www.mag2.com/m/0001564771.html

第14号
目次:
1 スポーツ業界の歩き方 ~原体験その13~
2 「アスリートの尊厳を守るためのシンポジウム」に参加して
3 厳選!「気になる記事」
4 編集後記
5 Q&Aに関して

「「アスリートの尊厳を守るためのシンポジウム」に参加して」全文掲載します!


■ 「アスリートの尊厳を守るためのシンポジウム」に参加して


今回も、指導者の問題に関して書きたいと思います。2月19日に日本スポーツ法学会主催の「アスリートの尊厳を守るためのシンポジウム」に参加して来ましたので、そこで感じたことなどをまとめたいと思います。

パネリスト

馳浩氏(衆議院議員・超党派スポーツ議員連盟 事務局長)
鈴木寛氏(参議院議員・超党派スポーツ議員連盟 幹事長)
杉浦久弘氏(文部科学省スポーツ・青少年局競技スポーツ課長)
河野一郎氏(独立行政法人日本スポーツ振興センター理事長)
為末大氏(一般社団法人アスリートソサエティ代表理事)
セルジオ越後氏(サッカー解説者)
望月浩一郎氏(日本スポーツ法学会理事・弁護士)

上記参加のパネリストの横顔を見ても分かる通り、この指導者問題に関しては多くの組織や機関が関わっているという事に改めて気づかされます。

ざっと、関係者を整理してみます。

政治家、行政、地方自治体、学校・教育関係者、日本オリンピック委員会(JOC)、日本体育協会、各競技団体、日本障害者スポーツ協会、TOPから幼少の指導者、TOPから幼少までの競技者、保護者、日本スポーツ振興センター、日本スポーツ仲裁機構

世の中の風潮としては「スポーツの現場から暴力を根絶しよう!」という風潮になっているように感じます。これはこれで全く間違っていません。ただ、指導者に対して「暴力はいけませんよ」と伝えるだけでこの問題は「ハイ、おしまい」となるのでしょうか?上記の関係者の多さからも分かるようにこの問題は非常に根の深い問題だと思いますので、本稿では問題点を整理したいと思います。

■ 指導者とは?

そもそも、「指導者」とは誰でしょうか?日本にはざっと分けて、下記の様な指導者が存在しているのではないかと思います。

・ボランティア指導者
・体育の先生以外の教員指導者
・体育の先生
・学校に行っている外部指導員
・有料のスクールの指導者
・プロレベルを教える指導者
・各年代の代表クラスの指導者

日本で一番多いタイプの指導者はどれだと思いますか?統計を見たことがあるわけではないですが、どう考えても、上3つですね。つまりは、日本の指導の現場はボランティア指導者に支えられているという事です。この点を考えた時、ボランティア指導者に深く感謝しなければなりません。しかし、同時にこのボランティア指導者が多いという事実はまた、日本のスポーツの指導の現場の状況を複雑にしています。

日本として、誰にスポーツ指導を任せるのか?というコンセンサスが現状では取れていないと言っても過言ではありません。学校なのか、地域なのか、民間なのか。ボランティアなのか、プロ指導者を育てるのか、教師に行わせるのか?

そして、前回も書きましたが、その指導者への指導の徹底を行わなければならないのですが、その仕組みづくりも早急に行わなければなりません。指導と言うのは当然技術指導だけではなく、スポーツの定義や子どもたちにとっての位置づけなども含まれなければなりません。

■ アスリートを守るためには?

今回のシンポジウムのテーマは「アスリートの尊厳を守るためのシンポジウム」という事で、まずは為末さんのコメントを紹介したいと思います。「選手も声を上げないといけない」確かにその通りだと思います。今回の女子柔道の件に関しては、選手が声を上げたからこそ、明るみになったわけです。日本においてはどの年代でもやはり、指導者の方が立場が上という状況が作り出されているとは思いますが、ここは選手も言う事は言わなければならないと思います。

ただ、ここにも、ボランティア指導者の影がちらほらと見え隠れします。ボランティア指導者にはただで「やってやっている」という気持ちが生じないでしょうか?また、保護者の方からは無償で「やってもらっている」という感覚が生まれないでしょうか?そうなってくると中々選手や親御さんが声を上げるのは難しくなってきます。さらに小さい時からコーチとアスリートの間で主従関係が成り立っていて、それが当たり前となってアスリートが成長していっているとは考えられないでしょうか?これが有料のスクールであれば、スクールを変えるとか、何も言わずに退会するなどの「抗議行動」を取る事が出来ます。

具体的に選手が行動するとはどういう事でしょうか?ここに一つ例を挙げてみます。もし、子どもたちに指導者の指導が合わなかった場合の事を考えてみてください。現状は、ほとんどのケースで我慢するか、競技自体を辞めるかのどちらかの選択肢しか用意されていないのではないでしょうか?ここで、「チームを移る」という考え方は日本ではほとんどないのが現状です。たとえこれがボランティア指導者でも、チームを移るという選択肢が子どもたちにあるのであれば、そこで指導者同士の競争が起きる可能性があります。チームは良い選手に逃げられたくありませんから、良い指導をしようというインセンティブが働きます。

このシンポジウムで、セルジオさんが「補欠は体罰だ」という事をおっしゃっていました。つまり、子どもたちはプレーするためにチームにいるのであって玉拾いや雑用をするためにそこにいるのではないと。ブラジルから日本に来たばかりのときは、なぜこの子たちはチームを移らないんだろう?と不思議だったと語っています。チームを移れるようにすることは一つ、子どもたちのプレー時間を確保できる方策なのかもしれませんし、選手と指導者の立場を対等に近いものする可能性がありそうです。

チーム間の選手の移動という事を現実的に考えた時、中学生以上であれば、部活に所属し、そこから逃れてプレーする事はほとんど出来ません。(一部野球やサッカーを除いて)そうなると、中学生や高校生のスポーツを担う機関が、学校で良いのかという問題に突き当たります。

■ 第3者機関の必要性

この会が日本スポーツ法学会が主催だったと事もあり、何かトラブルがあった時の駆け込み寺的な第3者機関を創るべきだという意見は各方面から挙がりました。当然、アスリートが声をあげるにしてもこうした機関が必要になって来ます。この役割を担うのはどこの組織が良いのか?と言うところでは、日本スポーツ振興センターもJOCも及び腰の印象を受けました。

恐らく、一番この事案に関して適切な機関は日本スポーツ仲裁機構なのではないかと個人的には思います。ただし、現状、この機構は一般財団法人であり、限られた権限しか与えられていません。下記の記事を読む限り仲裁機構は権限強化を熱望しており、第3者機関としての機能を果たしたいと積極的に思っているようです。

<スポーツ仲裁機構>「調査摘発部新設」代表理事が改革私案
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130212-00000043-mai-spo

小学生であろうが、プロであろうが、スポーツの現場で起こっている紛争の窓口となり、一定の解決をしてくれる機関が必要なのは確かです。ただし、これは為末さんがおっしゃっていましたが、声を上げた選手は試合に出さないなどの報復がされないように注意しなければなりません。

また、この第3者機関の費用面をどうするのか?というのもテーマに挙がっていました。誰が費用負担するのか?当然、ここのチームの方々にはボランティアではなく、仕事として取り組んでもらう必要があります。その辺りも検討課題です。


■ 守られるべきは選手だけではない?

このシンポジウムの中で、セルジオさんが良い事をおっしゃっていました。「指導者も守ってあげないと」確かにその通り、指導者の中には、ほんのちょっとの暴力も行けないのなら、指導が出来なくなってしまう、と心の中で感じている指導者も少なくないのではないでしょうか?つまり、指導の方法を知らない指導者に対して、指導方法を教えて行く必要があります。今のままでは、武器は与えないけど闘えと言っているようなものです。

確かにセルジオさんが心配しているように、このまま、指導者にばかり責任を取らせるようなことがあれば、多くのボランティア指導者が辞めると言い出し、日本のスポーツの現場が維持出来なくなる危険性があります。このシンポジウムには前U-23日本代表監督関塚氏もいらしていて、会場から意見を述べていました。その中で印象的だったのは「指導者は孤独です」という言葉。

金銭面、育成、継続的な情報提供や情報交換の場所の提供、相談窓口、など指導者を守って行く必要も強く感じました。

■ では結論、今後どうするの?

独立行政法人日本スポーツ振興センター理事長の河野氏及び、JOCの市原氏は共に各競技団体に自立を促していました。当然です。民主党の鈴木寛氏は国の役割は「応援」と「規制」だと言っていました。ただし、税金を使うには根拠が必要だからその根拠を示して欲しいというような趣旨の発言をしていました。これも当然です。

では、一体誰がリードするのか?

今回の指導者とアスリートの問題に関して、一番、リーダーシップを取りそうなのは上記記事に登場した日本スポーツ仲裁機構の道垣内代表理事のような気がします。しかし、日本として指導者をどうするのか?日本のスポーツをどうするのか、に関してリーダーシップを取りそうな人は残念ながら見つかりませんでした。

最後にこのシンポジウムで一番印象に残った、リーダー不在を象徴するようなシーンをご紹介します。

主催者である日本スポーツ法学会の望月弁護士からの怒りの一言

「何でこのシンポジウムを我々日本スポーツ法学会がやらなければいけないのですか?JOCとかスポーツ団体が先にやるべきことでしょ!」


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