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日本のスポーツ界を発展させていきたい。そのためにはどうしたら良いのかを色々な角度から検証してみたい。

文部科学省「スポーツ・フォー・トゥモロー」の華麗なる予定調和と嘉納治五郎先生の遺志

文部科学省の平成26年度予算項目の中に「戦略的スポーツ国際貢献事業」というのが今年度から設けられています。概算要求額は11億5000万円です。「平成26年度概算要求主要事項」のこの項目には以下のように記されています。

これまでのスポーツ交流に関する知見と実績を踏まえ、今後、IOCや世界の国々との交流・協力関係を築きながら、スポー
ツの価値をさらに高めようとする国際的な取組に貢献するため、「スポーツ・フォー・トゥモロー」を実現。

肝心の中身ですが、3つの事業が挙げられています。

①スポーツ・アカデミー形成支援事業 要求額約6億円

IOC、JOC、NOC、体育・スポーツ系大学等が連携して、オリンピズムの普及とスポーツ医科学研究の推進を図るため、IOC関係者等を外国人教員・研究員として招聘、各国のスポーツ指導者の受入れ・養成を行う中核拠点を構築する。

②戦略的二国間スポーツ国際貢献事業 要求額約3.5億円

青年海外協力隊等と連携し、学校体育カリキュラム等の策定支援など、途上国のスポーツ環境の整備に協力する。官民連携協力によるスポーツの国際協力コンソーシアムを構築し、各国の協力要請に迅速かつ的確に対応する。

③国際アンチ・ドーピング強化支援事業 要求額2億円

・世界の製薬企業等との連携を強化したネットワーク形成のためのスタッフをWADAに配置し、薬物ガイドラインの策定に
協力・貢献するとともに、薬剤データベースの構築、国際シンポジウム・セミナー等の共同開催を進める。
・アジアのドーピング防止活動の発展を促進するため、「アジア・ドーピング防止基金」に対し資金を拠出する。

となっています。

このほど、これらのうち、上2つの事業委託先が公募によって決定しました。結果は、

①スポーツ・アカデミー形成支援事業

筑波大学、鹿屋体育大学、日本体育大学

②戦略的二国間スポーツ国際貢献事業

独立行政法人日本スポーツ振興センター

この様に決まった背景について少し述べたいと思います。

皆さんは嘉納治五郎という方をご存知でしょうか?スポーツの学問を少しかじったことがある方はご存じだと思います。講道館の創始者であり、「日本の体育の父」とも呼ばれている方です。また、教育者としても知られ、現筑波大学の校長を25年ほど務めており、筑波大学キャンパス内にも立像が建っています。そんな嘉納氏の意思を引き継ぐため、2009年5月27日、嘉納氏がIOC委員に選出された1909年5月27日からちょうど100年目となる日に、一般財団法人嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センターという組織が設立されました。

この組織のHPに、組織の事業の3つの柱が記されています。それは、

オリンピック教育・オリンピズム研究事業:Olympic Education & Research on Olympism
アンチ・ドーピング国際協力:Play True Programme
スポーツ国際交流・協力事業:Global Outreach Programme

お気付きになりましたか?今回の文科省の「戦略的スポーツ国際貢献事業」の3つの事業と全く同じなのです。この組織についてもう少し詳しく見て行きましょう。役員には岡野俊一郎氏、森喜朗氏、石原慎太郎氏、竹田恆和氏、橋本聖子氏、遠藤利明氏、河野一郎氏、鈴木寛氏、山下泰裕氏、と日本のスポーツにゆかりのある方々がズラリと並んでいます。2009年に嘉納氏の意思を受け継ぎ始った事業が、2014年に国によって予算化されたと見てまず間違いないでしょう。

では、それを実際に行う受け皿として選ばれた団体を見て行きましょう。まず、①スポーツ・アカデミー形成支援事業に関しては、嘉納氏が校長を務め、一般財団法人嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センターの委員の河野一郎氏が大学院教授、学長特別補佐を務めていた筑波大学です。

そして、②戦略的二国間スポーツ国際貢献事業の方は、上記同様、河野一郎氏が理事長を務めている独立行政法人日本スポーツ振興センターです。こちらの方の公募には何社かのスポーツマネジメント会社が参加していたようですが結果日本スポーツ振興センターが委託先として選ばれています。ちなみに、公募開始から締め切りまで2週間しかなかったようです。

嘉納治五郎氏の遺志を国が予算化し、嘉納治五郎氏の遺志を受け継ぐ人々がそれを実行する、まあ、予定調和ですね。

ちなみに、日本には3つの大きなスポーツ関連組織があります。すなわち、日本体育協会、JOCと日本スポーツ振興センターです。元々、日本体育協会の初代会長は嘉納治五郎氏、そして、JOCは1989年に日本体育協会から分離・独立した組織です。嘉納治五郎氏の意思を受け継ぐ人たちが、3つの組織に分かれてしまっている状況です。今後、スポーツ庁を設立するに当たり、この3つの組織をどの様にしていくのか、水面下で色々な駆け引きが行われているようです。しかし、日本体育協会は「体育」という呪縛に囚われていて真のスポーツの普及には踏み出しにくい組織です。また、JOCも各競技団体の不祥事、スポンサーが東京オリンピック組織員会と被ってしまって資金集めに苦労しているなど、苦境に陥っています。

そもそも、この3つの事業、本来はJOCがやるべき事業だと私は思います。JOCのHPに「JOCの目的」が以下のように示されています。

オリンピック憲章に基づく国内オリンピック委員会(NOC)として、オリンピックの理念に則り、オリンピック・ムーブメントを推進し、スポーツを通じて世界平和の維持と国際友好親善に貢献するとともに我が国のスポーツ選手の育成・強化を図り、もってスポーツ振興に寄与する。

これを見る限り、3つの事業は全部この目的に沿った形になっているように思います。これをJOCがやらないのか、出来ないのかは分かりませんが、確実に影響力は低下しています。

そんな中、最も新しく出来た日本スポーツ振興センターの影響力が、totoのお金の影響もあり、年々上がって来ています。ちなみに、現在問題になっている新国立の所管も日本スポーツ振興センターです。そして、今回の入札。日本スポーツ振興センターが嘉納治五郎先生の後継者に指名されたのでしょうか?そして、スポーツ庁の議論も日本スポーツ振興センターを中心に行われていくのでしょうか?




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