昨日の続きで、一つのスポーツしか出来にくい日本のスポーツの弊害をまた別の視点から書きたいと思います。
突然ですが、高校時代に部活をやっていた方に質問です。
あなたは高校時代に同級生の他の部活の子の応援に行った事がありますか?
「はい」と答えられる人はかなり少ないのではないでしょうか?同級生がプレーしている姿を見る事が出来ないのは、365日部活をやっている事が一因である事は間違いないでしょう。アメリカでは、シーズン制で、そのシーズンに何もプレーしていなければ、普通に同級生の試合を見に行きます。プロレベルの試合でなくても、同級生が出ている試合を見る事はそれなりに楽しいものです。こういったことが、見る文化の醸成に繋がってくるのではないかと思います。
サッカーライターの小澤一郎さんとお話をしていた時に興味深いことをおっしゃっていました。曰く、日本は選手がスタジアムに戻って来ない。つまり、高校くらいまで部活などでサッカーをやっていた子がその後Jリーグの観戦者に変わっていかないそうです。それにより、見る人のサッカー観戦力が上がっていかなとの事でした。プレーした人には分かる凄いプレーがあった場合に「おー」と声を出すと、それがスタジアムに伝染していって、「今のプレー凄いんだ」となって、観客全体の観戦力が上がるのです。
では、なぜ、選手が観客にならないのでしょうか?まず、学生時代は練習や試合があるから、自分では見に行く余裕がありません。ここの弊害は多くの人が指摘しています。昨年のW杯日本代表の初戦が、日本時間の日曜日10時スタートでした。子どもたちがみるのには願ってもない時間帯です。ところが、この時間帯に自分たちの練習や試合を入れているサッカーチームがあってみられなかったという報道を聞いた記憶のある方もいるかもしれません。
ヨーロッパやアメリカと比べて、日本の子どもアスリートは試合を生でも映像でも見る機会は圧倒的に少ないです。流石にサッカーはこの辺の改革を進めているようです。色々なスポーツを見る事により、戦術理解なども当然進みますし、目標とする動き(物まね)のイメージもありますし、うまくなっていくことにも当然繋がっていきます。
日本ではプレーヤと観戦者が別物になっている傾向がありそうです。子どもの頃からアスリートが観戦に行ける環境を作る事により、スポーツの観戦力もあがってくるし、スポーツ人気も高まったくるように思います。
少し、話がづれました。365日一つのスポーツをやる事による、見る行為への悪影響は、もう一つ、競技そのものが嫌いになってしまう可能性があるという事です。部活をして、あまり良い思い出がなく、スポーツを卒業して行く人も多いのではないかと思います。この人たちが卒業後、スタジアムに行くでしょうか?
365日(一つの)スポーツをやっている事は、見るという観点でも日本のスポーツ文化発展に良い影響を及ぼしていないでしょう。子どもの頃から複数スポーツをさせて、プレーヤーを増やし、そのプレーヤが色々なスポーツを見れる環境を作る事により、より成熟した日本のスポーツ文化を創り出せるのではないかと思います。
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