昨日、11月13日、ラグビートップリーグが開幕しました。国民的熱狂をもたらしたW杯直後の日本国内における公式戦だけに、注目度もかなり高かったと思いますし、何より、どれくらいの人が観戦に訪れるのか、という点に関心が集まっていました。予想通り、チケットは完売でした。
ところが、蓋を開けてみると、スタンドはガラガラ、2万5000人収容の秩父宮で、10,792人、昨年のトップリーグ開幕戦よりも少ないというおまけまでついてしまいました。これだけ、ラグビーが盛り上がったのに、本当にもったいないとしか言いようがありません。
なぜこのような事が起こったのか。丁度、このブログでチケットに関して連載しているところ(http://norimoto.blog46.fc2.com/blog-entry-1276.html)だったので、基本的な事から解説してみます。
日本のラグビーリーグは典型的ないわゆる「企業スポーツ」として運営されています。企業スポーツの基本的な運営の仕組みを分かりやすく解説します。ある企業がスポーツチームを持ちたいと思ったら、それをリーグに申請します。そして、許可されれば、リーグに参入する事が出来ます。企業側はリーグに参戦するために、毎年、一定額のお金をリーグに支払って参入します。企業側は、当然チームの強化費(選手の給与、用具代、練習場代、合宿費、遠征費など)を全て負担します。
リーグは各チームから集めた参入金とチケット収入、放映権料(あれば・・・)、リーグへのスポンサー収入などを元に、リーグの運営を行います。つまり、試合の興行権はリーグが保有しているという事になります。チームは収入源がほとんどないという事です。ちなみにですが、ヤマハのHPに行っても、チケット情報が載ってません。これは、そもそもヤマハというチームには売るチケットがないという事であり、売る努力をしたところでヤマハには一銭も入ってこないので、そもそも売る必要がないという事です。
ここまで、基本的な構造について書きました。本題のチケットです。では、チケットはどの様に出回って行くのでしょうか?まず、リーグ側は対戦する2チームに一定枚数を買い取ってもらっています。これは昨日説明した、シーズンチケットのようなもので、リーグ側からしたら、半分近くのチケットは既に売れている状態になっているのです。昨日の、パナVSサントリーの例で見れば、25,000席のうち、9,000席(おそらく、パナ4,500、サントリー4,500)は各企業に販売していたようです。「通常」はパナやサントリーが買い取ったこれらのチケットは社員、関係者、取引先などに無料で配られています。
残りの16,000席のうちわけは、リーグスポンサー企業への無料配布、回数チケット・年間パスポート、そして、一般販売となります。一般販売は、各チケット会社経由で行われています。
それほど一般客が来ない通常の試合であれば、上記のオペレーションで問題がないのでしょう。ただし、今回はこのフィーバーです。今まで見に行った事がなかった人たちが一気に一般販売となっている各チケット会社に殺到して、表向きは「完売」になったのです。そして、チケットが欲しいが手に入らなかった人も多くいたのではないでしょうか?
リーグ側の苦悩も分かる気がします。今まで、さんざんチケットを買って来てもらっている企業に対して、いざフィーバーが来た時に「今回だけ少な目にして頂けますか?」というのも不義理な感じがします。今回に関しては、取りうる手はチケットを持っていいる人が入りきらなくなるというリスクはあったものの、座席数より多くのチケットを販売することか、企業側が持っていた分で明らかに使わなかった分を返してもらうなど、多少はあったように思います。
ただ、根本的には上記のような仕組みの元開催されているリーグでは今回の様な事がどうしても起こります。今まで企業にお金を出してもらって存続してきたリーグです。この仕組みには良い部分もあるでしょう。2019年までに、ラグビーが企業スポーツのままで行くのか、あるいは別の方法を取るのかの議論は必要になってくるでしょう。
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